学習者さんの中には、「まだピンインを振らないと読めないんです…」とおずおずと申告されるかたがいらっしゃいます。ピンインの有無が気になるということは、発音に熱心な証拠。発音講師講師としてうれしいことです。とはいえ、ピンインをずっと見ていても大丈夫なんだろうか?とご心配の方もいらっしゃるようです。
そもそもピンインとは?
ピンインは、1950年代に「漢字をアルファベットで表記しよう」という目的のもと考案され、改定を経て今に至ります。2022年12月現在の基準は2012年に定められた国家標準《漢語拼音正詞法基本規則》(GB/T 16159-2012)です。
要するに、中国語のピンインは中国語の音がわかる人たちが最初に作りました。このため、ネーティブなら間違えないけれど、学習者がそのまま文字を読むと間違いになってしまう書き方がところどころにあります。例えば、同じ音が違う文字(lüの母音「ü」ととjuの母音「u」は同じ音)で表されていたり、違う音が同じ文字が表されている(xunの「un」とchunの「un」の音は違いますが、同じ文字です)ことなどがあげられます。
その分、使用する文字の種類は少ないので、記号を覚える負担が少ないということが挙げられます。
ピンインは発音を学ぶガイド役
中国語はすべて漢字でできていますから、中国語を学ぶときには、漢字、意味、音を結び付けて学んでいきます。
漢字と意味はわたしたち日本語話者にとっては、いわば得意分野。でも、漢字と音、意味と音を結び付けるのは、ほぼイチから学ぶ必要があります。そこで救世主になるのが、音を文字で書ける「ピンイン」です。
今はスマホで手軽に録音できますが、それでも一瞬で流れていってしまう音を、文字として認識できるのは大変助かります。
初心者の学習ステップ
さまざまな学習ステップがあり、どれがいいというのはないのですが、わたしのレッスン手順は以下です。
1.ピンインがどんな音をあらわしているか音と文字を結びつける
2.音とピンインが結びついたら、漢字と結びつける
3.漢字と結びついたら、漢字の意味と結びつける
これが、すべて同時に、自動的に、無意識にできるようになったら、もうその漢字のピンインを見る必要はないと思います。それまでは何度でも堂々とピンインを振っていただいていいです。もし、ピンインを見たくなければ、ピンインを見ないようにして発音すればいいだけです。
ちなみに、わたしの自作テキストも大きくピンインが書いてありますし、音読レッスンで使っているテキストも大きくピンインが書いてあるものを使います。初心者には見やすさ、わかりやすさが一番なのです。
いったい、どのレベルからインは不要になるのか?
これは、正直言ってわかりません。なぜならわたしはピンインが不要になる世界をまだ知らないからです(笑)。わたしは知らない単語が出てきたときはピンインを振りますし、不安なときは何度でも確認します。
ピンインから離れられなくなったらどうしようって!?大丈夫、会話の時はピンインを書いている暇はありませんから、いつか必ず離れられるときが来ます。
中国母語話者もピンインを習うの?
中国母語話者も子どものころピンインを習い、漢字を習います。台湾などは注音符号を習い、その後漢字を習います。わたしたちがまずひらがなとカタカナを習い、その後漢字を学ぶのと似ています。
中国の小学校1年生の教科書には漢字の横にピンインが振られています。学年が上がるにつれて、ピンインは姿を消していきます。中国語話者の先生の中には「ピンインは覚えなくてもいいですよ。耳で音を覚えていえるようになったらいいんです」というかたがいらっしゃいます。確かに、多量に中国語の音に触れることができ、正しい音に直してくれるかたがいる環境ではそれでよいのかもしれません。
まとめ
外国語として中国語を学ぶ学習者や初心者には、やっぱり音の手がかりとなる、ピンインとじっくりお付き合いできたらな、と思っています。
ピンインに頼らなくても読めるようになろう!と思えることは素晴らしいこと。それまではなんでも使いましょう!ピンインも、過去に学んだ日本語でも他の外国語(わたしの場合は英語)でも、学習に役立てればよいのです。
この内容が、ピンインとのお付き合いについて何かのヒントになれば幸いです!
※本記事は、下記セミナーの内容の一部を抜粋したものです。