学芸員博物館実習スクーリング6日間体験談~学びと変化

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通信教育で学芸員資格を目指す社会人大学生にとって、山場のひとつが学校など施設に通って実施される「博物館実習(スクーリング)」です。2026年2月10日から15日までの6日間、大学に通い、実際に手を動かし、初対面の同級生たちと机を並べました。レポートを書くのとは異なる、新たな学びや気づきを得られる6日間であり、そこで築いた関係は今も続く人脈になっています。今回はその内容を記録しておきます。

通信制大学で学芸員資格を取った体験談の全体は、こちらの記事に書いています。

目次

学芸員博物館実習スクーリングの基本情報

私が参加した学芸員博物館実習スクーリングは9:00〜17:00、2月10日から15日までの6日間連続でした。受講者は約20人ほどずつ4クラスに分かれ、日ごとに異なる講師・教室をローテーションしながら、座学と実習を組み合わせて学びました。

緑豊かな玉川大学

1日目《実習区分Ⅳ・Ⅸ:展示の企画・制作/資料の保存に関する実習》:額装・マット装の実習と資料保存科学

1日は、額装とマット装の実習から始まりました。マットを切る作業は思いのほか難しく、思い通りのラインに仕上げるには何度か練習が必要でした。業者に依頼すれば手間なくきれいに仕上がる一方、1枚ごとに料金がかかること、かといってすべて自分で切ったり貼ったりしていると展示にかかる他の作業トの兼ね合いを考えなければあらないことを、あわせて教わりました。

生まれて初めて行うマット装

この実習のあと、展示を見るときに額縁やマットへ目が行くようになりました。マットがあることで作品が映えること、大きさが揃うこと、保護の役割も果たしていることなど、これまで気づいていなかった点に目が向くようになりました。

午後は教室を移動し、資料保存科学の講義を受けました。スライドや実物資料を交えながら進む内容で、とても勉強になりました。紙の劣化や保存に関する基礎知識を学べたことは、理系出身の身としても新鮮で、印象に残っています。

1953年3月18日付けの新聞
紙は保存により酸性に傾く(1953年3月18日付けの新聞)

2日目《実習区分Ⅵ・Ⅶ:展示の設計・展示実習/資料の取り扱い(美術資料)》:企画展の裏側と展示制作

2日目は祝日で、通勤ラッシュのない快適な道のりで大学へ。この日は教育博物館で1日を通した実習でした。午前は実際の展覧会運営を題材にした講義で、展示の企画・PR・物販・出版まで、学芸員が担当する業務の幅広さと、予算のなかでの工夫を知りました。また、掛け軸や巻物の扱い方も練習しましたが、思った以上に難しく、先生に助けていただきながら何とか終えました。

04_資料整理_巻子収納棚
巻子を取り扱うのも一苦労

午後はグループに分かれて実際に展示をつくる実習でした。何もないところから展示をつくるのは思った以上に難しく、決めるべきことも多いため、一時的に進行が停滞する場面もありました。しかし、お互いの得意分野を知ることでスムーズに進むようになり、分担を決めて最終的には展示を完成させました。この経験から、チームマネジメントの難しさと、作業を始める前の相互理解の大切さを実感しました。

展示風景
ようやくできあがった展示

3日目《実習区分Ⅷ:資料の取り扱い(歴史資料)・文化財保護》:考古資料の取り扱いと座学の意義

3日目はキャンパス内にある教育博物館で1日を過ごし、考古資料の扱いを学びました。午前は考古学や博物館の運営、学会などの講義、午後は実習で土器を固定・梱包する方法を学びました。実際に土器に触れるとなると緊張を伴いました。固定や梱包の作業は、慎重さを求められるものでした。

玉川大学教育博物館
教科書、イコンなどが充実している玉川大学教育博物館

4日目《実習区分Ⅲ・Ⅺ:資料整理・教育活動に関する実習(鑑賞学習)》:資料整理と鑑賞学習

4日目は資料整理でした。博物館収蔵庫問題に関する書籍、『博物館の収蔵庫問題と新たなコレクション管理』(雄山閣、金山喜昭編著)を読んでいたこともあり、講義の内容は興味深く感じられました。また、資料整理に関する実務を実際に手を動かしてできたのは貴重でした。

午後は資料をもとにグループでさまざまな解釈を考えるディスカッション形式でした。教授からの質問に各自が回答したり、グループディスカッションを重ねる中で、お互いの職業やバックグラウンドが自然と見えるようになり、さらに同級生同士の理解や交流が深まりました。3日目までの実習でまだ手探りだった雰囲気が、この日を機にほぐれていったように感じます。

玉川大学の教室
仲間とのディスカッションは大学講義の醍醐味

5日目《実習区分Ⅴ・Ⅹ:交流事業・広報活動の企画立案/資料の修復に関する実習》:展覧会運営と資料修復

5日目午前は「展覧会の運営」がテーマでした。展覧会開催の準備から会期終了までの流れを学んだ後、各グループが一つパンフレットを選び、教育プログラムを考える演習でした。各グループがそれぞれに工夫を凝らしたプログラム案を考案しました。

他のグループの発表を聞いていてふと過去にさいたま市立盆栽美術館で開催された「みんなde盆栽になろう」というプログラムを思い出しました。博物館や美術館の教育プログラムを考える際には、展示やプログラムについて幅広くアンテナを張る必要があると感じました。そして、対象年齢や予算といった制約のなかで企画を立てる難しさも実感しました。

午後は資料の修復実習でした。傷んだ資料を扱う作業は緊張を伴うものでしたが、懇切丁寧な解説のもと、冊子作りも楽しく取り組むことができました。

修復実習での和綴じ

6日目《実習区分Ⅱ:博物館における学芸庶務・資料収集管理に関する実習》:資料の収集管理と質問対応

5日間の実習を経て迎えた最終日。毎日の通学で疲労も蓄積していましたが、朝早く来た学生同士で情報交換をする和やかな様子が見られました。

この日は資料の収集と管理がテーマで、最終日ということもあり質疑応答が中心となりました。担当の先生には博物館行政に関わってきた経験があり、多岐にわたる質問に丁寧に答えていただきました。6日間で学んだ内容を振り返りながら質問できる、締めくくりにふさわしい時間でした。

先生が持ってきてくれた多数のパンフレット

これからスクーリングに臨む方へ

6日間を通じて感じた、実用面での気づきをまとめます。

交流について

私は元々積極的なタイプではありません。しかし、同級生との関係づくりは自然に任せるのではなく、自分から働きかける意識が必要だと感じました。大学の講義は、自己紹介の時間はなく、すぐに実習が始まります。「あとで連絡先を聞けばいい」「そのうち」ではなく、会えるうち、話せるうちに連絡先を交換しておくことをおすすめします。私は最終日の帰り道にLINEグループを作り、これが卒業後も続く関係につながりました。

講義への積極性について

様々な背景のかたが集まる博物館実習。博物館学芸員の取得目的も、実習受講の目的も様々です。最低限の単位取得を目的とする方もいたり、海外から帰国し日数が限られている方もいたりします。ただ、忙しい中、費用と時間をかけて参加していることは確かです。グループワークでは目標意識をひとつにする働きかけが必要になる場面もあるため、可能であれば早い段階で簡単な自己紹介や情報交換の時間を設けることをおすすめします。

体調管理について

私が参加した博物館実習の開催時期は2月。6日間連続の早起きと満員電車での通学は、想像以上に負担がかかりました。会場が寒かったり、トイレが遠かったりと、思うように過ごせなかったり、昼食でも温かい食事や飲み物を確保しづらいこともあるかもしれません。自分自身がほっと落ち着けるような食べ物や飲み物を持参したり準備したりしておくと安心です。

持ち物について

座学のみと確定していない限りは、スカート派のかたもパンツスタイルなど動きやすい服装が実用的です。博物館のなかで実習するときは、作品保護や作業効率のため、ボタンなしのトップス、スリッポンなど脱ぎ履きしやすい靴、ズボン着用が必要でした。参考にしてください。
ハンカチとマスクは予備も含めて持参した方がよさそうです。よく手を洗うのでハンドクリームもあるとよいかもしれません。また、指サックがあると、紙資料や薄い素材を扱う際に役立ちます。一つあると安心です。

所感

6日間を通して、教室の空気が少しずつ変わっていくのを感じました。初日は手探りの状態でしたが、日を追うごとに言葉を交わす機会が増え、最終日には自然と会話が生まれる関係になっていました。短い期間で関係性が変化していく過程は、実習の内容と並んで印象に残っています。

何を学ぶか、どう今後につなぐかは自分次第

座学と実習の比重も、日によって大きく異なりました。半日以上座学が続く日もあれば、ほとんどの時間を実習に充てる日もありました。座学だけが続いたときは物足りなさを感じる瞬間もありましたが、基礎知識があるからこそ、実習で手を動かした際の理解が深まるようにも思います。逆に、実習を経験したあとに座学に戻ると、講義の内容がより実感を伴って理解できる場面もありました。座学と実習は別々のものではなく、行き来しながら理解を深めていくものだと感じています。

おわりに

6日間の実習を終えて感じたのは、博物館実習はあくまで実習であり、自分は学芸員としての入り口にすらまだ立てていないということでした。しかし、博物館で学芸員として働くためには、学芸員としての勤務経験が数年単位で求められます。資格を取ったばかりでは、なかなか越えられない壁です。

そこで、私は学芸員として博物館に勤務することを目指すのではなく、資格を通じて得た知見を活かして、博物館や文化・アートに対して何らかの形で関わっていきたいと考えるようになりました。埼玉県歴史と民俗の博物館評議会委員の公募に応募したのは、その実践のひとつです。現在参画しているビルのリノベーションプログラムも、その延長線上にあります。また、ボランティアという関わり方も、選択肢のひとつだと考えています。

6日間は決して楽な日程ではありませんでしたが、終えてみると、確かな手応えとして残るものばかりでした。学芸員として働くという一本道でなくても、資格を活かす道はいくつもある——それが、この6日間を終えて実感していることです。これから博物館実習スクーリングに臨む方も、きっと同じように、大変さの先にある手応えとつながりに出会えるはずです。ぜひ、飛び込んでみてください!

玉川大学
6日間通った玉川大学。お世話になりました!

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