中国語の発音を学ぶときに覚えなければならないピンイン。これまで知らなかった音をアルファベットで書き表すという二重のハードルがあるため、少しでも抵抗感を下げるためにカタカナを使う、という方法があると聞きます。
たとえば、カタカナ書きが振ってあるピンイン表があります。また、中国語の漢字を入力すると、ピンインやカタカナを出力してくれる無料のサイトもあります。「抵抗感を少しでも減らす」ために「母語」で外国語を表す、という方法は便利ですね。
一見、初心者さんによさそうな方法ですが、果たしてそうでしょうか?
今回は「e」を例に図解します。
ピンイン「e」の音は3つの音を表す
ピンインで「e」と書かれる音は、実は3種類あります。
単母音のe、eng
舌は巻かず、まっすぐのまま、舌を後ろにひっこめます。日本語に近い音はありません。
母音er
日本語に近い「ア」の音から中国語の「r」の位置に舌を動かす、ひとつの音の中に変化のある音です。日本語に近い音はありません。
複合母音のie、ei、鼻母音en など
単母音のe、eng、er以外のピンインは、日本語の「エ」に近い音になります。
「e」の3種類の音をカタカナで表すと?
日本語の「エ」に近い音が含まれている、複合母音のie、ei、enなどの「e」は「エ」と表現してもよいかもしれません。
しかし、母音erと、単母音のe、engは日本語に近い音がありません。erは「アー」「アル」など、eは「ゥア」とか「オァ」などと書いている参考書が多いようです。
じゃあ、カタカナでいいじゃん、と思った方。日本語と中国語の音の区別の方法は異なるため、そんなに甘くはないのです。
日本語と中国語の母音を図で比較する
日本語の母音図をご覧ください。これは、口の中を横から見て、上下左右に3つずつ、9のブロックに分けた図です。「アイウエオ」を発音するときの舌の一番盛り上がる位置を示すとこうなります。
次に中国語の母音の位置(赤字)を重ねてみます。
「e」が3つのポジションに出現しています。そして、単母音の「e」、「er」は日本語の音に近い音がないことがわかります。日本語のカタカナで書くことはどうしても難しいのです。
結論「ピンインと中国語の音を覚える」
今すぐ中国語を話さなければならない、サバイバルのための中国語なら、カタカナを手掛かりの一つとして声を出したほうがよいでしょう。しかし、少しでも中国語の発音に興味をお持ちになったなら、少々面倒でもピンインを覚え、ピンインと中国語の音を結び付けることをおすすめします。
大阪大学 外国語+IT講座(大阪大学 世界言語研究センター)が出しているピンイン表は、男性と女性の声で、一声~四声までの声調での発音が聞けます。このようなものも利用するといいでしょう。
サバイバルのためにカタカナで覚えても、いつかはきちんと通じるためにピンインを覚えたり、声調を覚える日が来るかもしれません。そのときに自分が覚えたことをまた覚え直すのは、大変ですよ。
さいごに
中国語の音を習ったことがないとき、仕組みがわからないとき、誰だって難しく感じるもの。カタカナに頼りたくなるときもあるでしょう。ただ、ピンインとカタカナで混乱してしまって中国語が嫌になってしまったら大変です。
一度でピンインを覚えられなくっても大丈夫。じっくり焦らずやっていきましょう!