さいたま新都心のコクーンシティ。あの気持ちのいいスターバックスの一角で、月に一度「認知症カフェ(オレンジカフェ)」が開かれているのを、ご存じでしょうか。
「オレンジカフェ」の“オレンジ”は、認知症支援のシンボルカラーです。認知症サポーターがつける「オレンジリング」と同じ色。地域にお住まいのシニアの方、認知症のご本人、そのご家族やご友人が、おいしいコーヒーを片手にゆっくりお話しできる——そんな場所です。
私はこのカフェに、ボランティアとして関わっています。今回で、3回目の参加になりました。主催は、埼玉県さいたま市大宮区・東部圏域地域包括支援センター白菊苑さんです。

ボランティアの活動はとてもシンプル
「ボランティア」と聞くと、何か特別なことをするのかな、と身構えてしまうかもしれません。でも、私がしていることはとてもシンプルです。
自分のドリンクを1杯買って、参加者の方の話し相手になる。それだけです。会の進行そのものは、白菊苑の方がご担当。私たちボランティアは、肩の力を抜いて、ただそこにいる方々と心地よい時間を過ごせるようにします。
だからこそ、参加するたびに、思いがけない出会いや発見があります。
ある日いちばん驚いたこと──ChatGPTを使いこなすシニアの方
ある日、いちばん印象に残ったのは、ある参加者の方とのお話でした。
なんとその方、生成AIを使いこなしておられたのです。例えば、新潟に旅行に行く前は、「生成AIに簡単な旅行プランを立ててもらって、その中から自分が行きたいところを選ぶんだよ」「(AIが出してくる)とおりに行くかどうかは自分次第だけどね」と、軽やかに話してくださいました。
そばにいた医薬系学部の学生ボランティアさんが、すかさず「個人情報だけは入れちゃだめですよ」と声をかけると、「あら、そうか」と笑顔でうなずく。「やっぱり危ないもんなんだねえ」と話が続いていく。世代も立場も違う人たちが、一杯のコーヒーを囲んでAIの話をしている。その光景そのものが、なんだかとても現代的で、そして温かいものでした。

また、シニアさんのなかの会話ではこんなやりとりもありました。
「時代についていくことも、必要だね」
「コンピューターで世の中が変わると言われたけれど、本当にどんどん変わっていくね」
「AIは寿命がないというけれど、そのうち寿命ができて、また世の中が変わるかもしれないね」
そして——このAIの使い方も、実はこの認知症カフェで、仲間に教わったのだそうです。
スマホやタブレットを使いこなせる方もいらっしゃいます。主催者の方から「8月と9月は(認知症カフェの)会場が変わりますよ」と聞くと、その場でさっとグーグルマップを開いて、「次の会場はここだね」と自分で調べていました。みんなにスマホを見せようとしたら「これは小さすぎて見えないねえ」と笑い合っていました。
教わるだけでなく、自ら手を動かして確かめる。その姿が、とても自然で、格好よく見えました。
心に残った方は、ほかにもいらっしゃいます。補聴器をつけていて、耳が聞こえにくいという参加者の方。それでも、まわりの人との会話を、心から楽しんでいらっしゃいました。聞こえにくさを理由に会話から遠ざかるのではなく、道具の力も借りながら、前を向いておしゃべりを楽しむ。
支える・支えられる、という一方向の関係ではなく、ここは人が集い、語らう場所でもある。そのことに、私はハッとさせられました。
立ち止まっていた背中が押されるとき
正直に打ち明けると、少し前の私は、どこかで立ち止まっていました。
子どもたちはどんどん成長していくのに、将来の進路に向かって頑張っているのに、自分は何に向かっているのか。職場で出会う多くの起業家や経営者の方がた。どなたも考え抜き、前に向かって進んでいきます。
「自分は、これから何を、どうしたらいいのだろう」と思案にくれることもありました。
でも、認知症カフェのシニアの方々は違いました。人それぞれ、カフェに楽しみを見つけ、新しい知識を採り入れて、挑戦している。「時代についていくことも必要だね」と、変わりゆく世の中をおもしろがりながら、まっすぐ前を向いている。
ちょうどこの頃、私自身も、ある新しい挑戦を引き受けることにしたところでした。
きっかけは名刺交換でした。会社の名刺とプライベートの名刺の両方をお渡ししたところ、お相手が注目したのがプライベート名刺の「認知症サポーターキャラバンメイト」でした。会社とは少し離れた立場で認知症サポーター養成講座を開催していることを伝えると「ぜひ何かの機会に、登壇してもらえませんか」と、お声がけをいただいたのです。
ただ、私は認知症の専門家ではありません。だから、正直にこうお伝えしました。
「専門家として何かをお話しすることはできません。でも、登壇される方のお話を引き出すファシリテーターの役割なら、お引き受けできます」
すると、「では、ぜひその形で」と。こうして、この夏、私は新しい一歩を踏み出すことになりました。
正直、少し不安もあります。自分はファシリテーターだって初めてです。でも、認知症カフェで出会った方の姿を思い出すと、背中を押される気がするのです。年齢を重ねながら、前を向いて挑戦を楽しむ。だったら私も、私なりに、やってみよう——と。登壇のお話は、また改めて、ここでご報告できたらと思っています。
これからも続いていく認知症カフェ(埼玉県さいたま市地域情報)
うれしいことに、認知症カフェ(オレンジカフェ)はこの夏も続きます。8月と9月は、期間限定で、会場をスターバックスから「高倉町珈琲 大宮店」に移しての、開催です。
- 8月20日(木)10:30〜11:30
- 9月17日(木)10:30〜11:30

座席数の関係で参加人数に限りがあるため、事前のご連絡が必要とのこと。また、おひとり一品のご注文をお願いします。ご興味のある方は、地域包括支援センター白菊苑さん(048-658-5588)までお問い合わせください。
※8月と9月の会場(高倉町珈琲大宮店)。10月からはさいたま新都心 コクーンシティ コクーン2店に戻ります。
認知症カフェは、決して特別な場所ではありません。おいしいコーヒーがあって、気のおけないおしゃべりがあって、誰かが誰かに、そっと何かを教えてくれる。そんなあたたかい時間が、いつもそこにあります。
私自身、この場所に何度も背中を押されてきました。あなたも、ふらりと立ち寄ってみませんか。
さいたま市の認知症カフェの情報はこちらから。地域の認知症カフェは、「オレンジカフェ」「地域名」などで検索するとヒットすることが多いようです。
